この度の熊本地震、想像を絶する事態に先の見えない中、大変なご苦難、長期に及ぶご不安、熊本県や大分県で被災された皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。
大地震、今回は継続して頻発する未だ経験したことのない地震活動によって、数多くの建物、家屋が倒壊、水道、電気、ガスのライフラインが寸断されるなど生活ができない状態になってしまいました。
このような状況下で、隣県に住む私たちが早く何かをしてあげたい、食料、飲料水、毛布を送って届けてあげたいと考えるのは、日本人のDNAが働くからだと信じています。
しかし一般人は、私も含めてですが、災害対策の専門家ではありません。
まだ続いている地震の収まらない被災地では、現地に行ったところで役に立つかどうかも分からず、返って足を引っ張る結果になるとも限らないですし、自分に何ができるのか落ち着いて考えることが大切だと思います。
早々に行動を起こす方を否定するわけではありません、その方の勇気ある活動は、必ず被災者に想いと共に届いていると思いますし、むしろ感謝の気持ちが大きいです。
地震の被災で、いつも胸が痛むのは、建物の倒壊によって人命が失われる、命を取りとめたとしても意識不明の重体、障害が残る重症を負う方がいらっしゃることです。
人の生活を守るための建物が、地震によって凶器となり命を奪う、生活を混乱させることは、あってはならないことだと思います。
熊本地震では広範囲に渡る複数の震源から何度も揺さぶられて、ボディーブローのように押し寄せる地震により建物が受けるダメージも次第に大きくなっていきます。
建物の倒壊の仕方も一通りではありません。
地震そのもので壊れる以外に、山沿いの土砂崩れによるもの、建物の損壊を免れても出火して火災が発生する、隣の家の倒壊に連鎖するなど、複数のケースがあります。
地震により被災した建物が、倒壊しないで済むように建てられていたのかどうか検証することや、立地や建て方など設計や建設のやり方によっては防ぐことができたのかどうかを考えることは、大切だと思います。
これを行う機関は、国であれば国土交通省、被災した県、市町村など地方公共団体ですが、実務面で必要になる人材は、建築に関わる専門知識を持っている人です。
私はその時こそ、一級建築士、二級建築士、木造建築士の出番と考えています。
実は、既に一部の建築士が活動を始めています。
「被災建築物応急危険度判定」という業務です。
これは地震直後、早急に、余震等による被災建築物の倒壊、部材の落下などから生ずる二次災害を防止するとともに、被災者がそのまま自宅にいてよいか、避難所へ避難したほうがよいかなどを判定するために公共団体が行う調査です。
応急危険度判定は、大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としています。
その判定結果は、建築物の見やすい場所に表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建築物の危険性について情報提供することとしています。
また、これらの判定は建築の専門家が個々の建築物を直接見て回るため、被災建築物に対する不安を抱いている被災者の精神的安定にもつながるといわれています。
(一般社団法人 日本建築防災協会HPより抜粋)
応急危険度判定は誰が行うのでしょうか?
応急危険度判定は、市町村が行う地震発生時の様々な応急対策のひとつです。
しかし、阪神・淡路大震災のような大規模震災の場合には、判定を必要とする建築物の量的な問題や被災地域の広域性から行政職員だけでは対応が難しく、民間の建築士等がボランティアで「応急危険度判定士」として協力した事例があり、東日本大震災においてもその経験が活かされています。
民間の建築士等は都道府県が行う講習を受講して知識を得た後「応急危険度判定士」として登録される制度となっています。
つい先日、NHKのテレビで熊本地震被災地にて「応急危険度判定士」が実務を行う現場が報道されました。
「危険」「要注意」と判定された家屋の住民の方はショックで脱力してしまい、とても気の毒でした。
しかしながら、そのおかげで潔く避難して命の危険を回避することができるのなら、価値のある制度だと思いました。
私も公共団体の講習があれば、直ぐに受講しようと身構えています。
被災期間は計り知れませんが、いずれ復興へ向かう日が来ます。
まずは被災建物の調査・診断をする。
残すか、壊すか、残すのであれば耐震補強、壊した後に建てるのなら耐震・免震・制震など地震が起きても安心な建物の設計・建設を心がけて、再び人が安全に暮らせる街並みを作っていく。
それをやることこそ、建築士の使命であります。
私たち建築士が貢献できること、強く意識して励んでいきたいと思います。